2011年 佐藤レポート めまい No.1
めまいの種類を詳しく説明しています。
めまいを起こす疾患は数多くある。
そこで、めまいを中心に簡単ではあるが分類をしていきたいと思う。
めまいの分類には耳鼻科的立場・神経内科的立場・脳外科的立場からなど、色々な分類法がある。
これから述べる分類は特定しやすい、めまいの出方とその随伴症状から判断して分類していくものである。
めまいの分類にはまず大きく分けて
の3種類に分類される。
まずこの3種類を1つずつ説明していく。
ふらつき
ふらつきは軽度の内耳障害も考えられるが、主に中枢性の平衡障害が考えられる。
平衡感覚を司る脳幹や小脳に血流が回らなくなり、ふらつきが起こる。
この場合の原因は構造的なストレス、特に胸頸部・頭頸部のゆがみによる血管圧迫。
4つのストレスによる自律神経(血管運動)失調がある。
また、回転性の回復期や小脳炎・脳幹炎、脊髄小脳変性症でもふらつきが認められる。
立ちくらみ
立ちくらみは失神直前の状態とも言われ、脳幹の背側にある網様体に虚血が起きたときに起こる。
この虚血が強く生ずると、眼前暗黒感といって文字通り目の前が真っ暗になる状態になる。
これは主に若い人では起立性自律神経失調によるものがほとんどだ。
それとは別に、老人は椎骨動脈・脳底動脈に血栓や梗塞が起こる椎骨脳底動脈不全症が考えられる。
これは放置しておくと、いずれ梗塞が脳に回り、脳梗塞を起こすリスクが高まるので老人の立ちくらみは注意が必要。
小脳出血・クモ膜下出血
頭痛が伴うものには小脳・クモ膜下の出血と再発性の偏頭痛と2種類ある。
小脳・クモ膜下出血の場合には突発性のガ†ンというような頭痛が特徴。
この場合は様子を見ている場合ではなく、一刻も早く脳外科にかかる必要がある。
良性偏頭痛性めまい症
偏頭痛の場合は元々偏頭痛持ちの人、ストレスや疲労過多、寝不足などの偏頭痛の因子が強い人がなりやすい。
また、女性に多く小児にもみられる。
聴覚症状はなく、頭痛と共に回転めまい起こり数分で治まる人もいれば、24時間かかる人もいる。
これは再発性が多いので出たり出なかったりするのが特徴。
突発性難聴
突発性難聴でのめまいは約1~2週間続く。
これは主にウィルス感染が内耳で起こり、前庭神経と蝸牛神経がウィルスに侵されて発症することが多い。
質問の段階でめまいが出る前に風邪などのウィルス感染がなかったかを聞くことも多い。
もし、ウィルス感染の疑いがあればすぐに脳外科へ促す必要がある。
これは、前庭神経はウィルスに侵されて神経が傷ついてしまっても、その代償は小脳がするのでめまいは数週間で軽快するが、蝸牛神経が侵された場合は、代償する器官がないので、聴覚は失ったままになってしまう。
なるべく初期の内に早くウィルスを消滅させる必要がある。
また、ウィルス感染がなかった場合は、内耳梗塞の可能性があり、脳卒中のリスクが高まるのでこれも注意が必要。
メニエール病
メニエール病は内耳リンパ水腫と言われている。
これは、内リンパと外リンパの循環と吸収が滞って起こるとされる。
主に、自律神経失調による循環障害・ウィルス性・アレルギー性が考えられている。
メニエールでのめまいは、1~2時間続く。
これは内耳のリンパ水腫なので、循環が改善するには少なくとも1~2時間はかかるということ。
そして同時に聴覚症状も出てくる。
そして1~2時間でめまい・聴覚症状がおさまり、また症状が出てくるといった特徴がある。
神経血管圧迫症候群(NVC)
神経血管圧迫症候群は、脳の動脈で内耳神経を圧迫することによってめまいが起こる。
このめまいの特徴は1分以内に治まるということ。
末梢神経は30秒以上発火出来ない。これは末梢神経の特長で、ずっと神経を圧迫していても30秒で神経は慣れて、刺激として成立しなくなる。
つまり、圧迫のままでもめまいは一時的に止まる。
しかし、圧迫が強くなったり、一旦圧迫がとれてまた圧迫されたりすると、まためまいは再発する。
また、前庭神経と一緒に蝸牛神経も圧迫されると耳鳴りや難聴も併発する。
誘発性
誘発性は頭を動かしたとき、頸を動かしたとき、左上肢を動かしたときにめまいが起こる。
頭を動かしたとき
頭を動かしたときにめまいがする場合は、30秒以内で治まるかどうかで鑑別する。
30秒で治まれば、良性発作性頭位変換眩暈症(BPPV)で耳石障害が考えられる。
もし、30秒で治まらずその体位で居る限りめまいがしてしまう場合は、悪性持続性頭位眩暈症(MPPV)ということになる。
MPPVはほとんどの人が小脳か脳幹の出血か、梗塞か腫瘍があることが多い。
この場合は垂直眼振が起こることもある。これも一刻を争う危険なめまいだ。
首を動かしたとき
これはゆがみや頚椎症によるめまいで、屈曲したときや回旋したときに決まって起こるもの。
頚椎の変形やゆがみによって椎骨動脈が圧迫されて、脳幹に血液がいかなくなることでめまいが生じる。
左上肢を動かしたとき
左鎖骨下動脈の起始部に狭窄があり、左上肢を動かしたとき(特に屈曲挙上)に鎖骨下動脈が更に圧迫狭窄されて、左鎖骨下動脈・椎骨動脈の血液が乏しくなる。
すると、正常の右椎骨動脈から脳底動脈に向かうはずの血液が、循環不全の左椎骨動脈へと流れて逆流してしまう。
そして、脳底動脈から脳幹への血液供給が間に合わなくなり、脳幹の前庭神経核が虚血を起こしてめまいが生ずる。(鎖骨下動脈盗血現象)
遷延性(せんえんせい)非定型
遷延性のめまいは、主に前庭神経炎か脳幹梗塞・脳腫瘍などが考えられる。
前庭神経炎としてのめまいは、数週間で治まることがほとんど。
前庭神経炎は突発性難聴と同じく、発症前にウィルス感染があったかどうかでおおよそ判断がつく。
もし感染があればウィルス性の前庭神経障害が高い。
しかし、患者がウィルス感染に自覚がない場合がある。その場合は温度眼振検査というテストがある。
これは、水道水か氷水を20cc位耳の中に入れると、正常な場合は前庭神経が反応し、めまいが起こる。
もし、めまいが起こらなければ、前庭神経に障害がすでに起こっていることになる。
一過性再発性非定型
一過性再発性のめまいはてんかん・一過性脳虚血発作(TIA)・神経血管圧迫症候群(NVC)がある。
てんかんは、大脳の神経が興奮を起こして、過剰なインパルスが各地に送られて脳の誤作動が生じる発作。
てんかんの主な症状としては、痙攣や意識障害などだが、この発作でもめまいが起こることがある。
また、てんかんは子供に多く、成人になってのてんかん発作は脳腫瘍が潜んでいる場合があるので注意。
一過性脳虚血発作(TIA)は基礎疾患として、内頚動脈系・椎骨脳底動脈の狭窄、前・中・後の大脳動脈の血流障害があるところに、一過性の低血圧が起こるとめまいが生じる。
神経血管圧迫症候群(NVC)は前章で述べたので割愛する。
次はめまいの対策と自己訓練法を紹介する。
めまいの基礎知識はこちらへ⇒ めまい大辞典
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